11月3日に実施された米国大統領選挙では、ジョー・バイデン前副大統領が勝利を確実にしながらも、ドナルド・トランプ大統領が表立って敗北を認めず、米国社会は真っ二つに割れている格好だ。バイデン氏は勝利演説で「分断ではなく団結」と呼びかけたが、はたして米国社会はどうなるのか。作家の橘玲氏に聞いた──。
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今回の米大統領選は、「米国社会の分断」をまざまざと見せつけました。バイデン、トランプ両氏の得票数だけをみると、ともに7000万票以上を獲得し、くっきり分かれた格好です。トランプ氏はようやく政権移行手続きを認めたものの、いまだ敗北を受け入れておらず、ここまでこじれたものを元に戻すのは相当難しいでしょう。
今回の選挙でなにがみえてきたのか。米紙『ニューヨーク・タイムズ』での1万5590人の有権者を対象とした出口調査(エディソン・リサーチによる集計)は興味深い実態を浮かび上がらせています。
まず男女別にみると、男性の53%がトランプ氏、女性の57%がバイデン氏に投票。前回(2016年)の大統領選でのヒラリー・クリントンの敗北は「女性有権者に嫌われたから」と言われましたが、バイデン氏は保守的な女性票も獲得できたようです。人種でみると、白人の58%がトランプ氏、黒人の87%がバイデン氏、ヒスパニック/ラテン系やアジア系でもバイデン氏が多数を占めており、女性と非白人の票が勝利につながったことがみてとれます。
年齢でみると、18~29歳の若年層では60%、30~44歳でも52%がバイデン氏を支持する一方、45~64歳の50%、65歳以上の52%がトランプ氏を支持、と若年層と中高年層ではっきり分かれていることがうかがえます。
学歴をみると、大卒の55%がバイデン氏、非大卒の50%がトランプ氏となっています。とりわけ白人非大卒でトランプ支持は67%と圧倒的で、「トランプの熱狂的支持者は白人労働者階級」「学歴が上がるほど民主党支持の『リベラル』が多く、高学歴にはトランプ支持者はほぼいない」という説を裏付けるデータになっています。