新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、米国の経済格差はますます広がっています。コロナ禍の巣ごもり需要の高まりで「GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)」と呼ばれる巨大IT企業は業績を拡大。データでは、富裕層の収入は減っていませんが、外出できないので支出は減り、貯蓄は増え続けています。その反面、貧困層は収入が減っているうえに、家族を養うための支出は変わらないので、貯蓄を取り崩すしかないのです。
「左派ポピュリズム政権」誕生の可能性
米国でこのまま経済格差が進めば、その行き着く先はどうなるのか。それを示唆する興味深いデータが、前述のニューヨーク・タイムズの出口調査にありました。
まず、今回の大統領選の人種別支持層をみると、黒人男性の5人に1人(19%)、ラテン系男性の3人に1人(36%)がトランプ氏に投票していました。従来なら民主党支持層だったマイノリティでも、トランプ時代の4年間でかえって共和党支持者が増えているのです。その背景にあるのは、オバマ政権下で経済格差がかえって拡大したことでしょう。
さらに、出口調査の年齢別支持層をみると、18~29歳の若者の実に60%がバイデン氏に投票しています。45歳以上では共和党(保守派)と民主党(リベラル派)が拮抗していますが、年齢が若くなるにつれリベラルが増えているのは明らかです。
最近の研究では「若い時の政治的立場は年をとってもあまり変わらない」とされているので、この「リベラル」な若者がそのまま年を重ね、より「リベラル」な世代が有権者に加わっていけば、アメリカはますます左傾化(リベラル化)していくことになります。
とはいえこれは、リベラルな民主党が安定して選挙に勝つ時代が来るというわけではありません。バイデン政権が共和党支持層だけでなく、民主党内の左派(レフト)を満足させることができなければ、プアホワイト(白人)とマイノリティ(黒人やラテン系)の貧困層が連帯し、理想主義的な若者たち(ラディカル・レフト)と結びつくことも考えられます。これは私の思いつきというわけではなく、アメリカの地政学の第一人者で「影のCIA」とも呼ばれるジョージ・フリードマンが『2020-2030 アメリカ大分断 危機の地政学』(早川書房)で述べていることです。