BSを民営化すれば残るのは「NHK総合」の地上波1チャンネルとラジオだけになる。
「NHKの番組で真の公共放送と呼べるのは災害情報と選挙の政見放送くらい。公共放送分に見合う受信料はせいぜい月額200~300円でしょう。その金額なら国民も納得できる。足りない財源は、総合テレビも公共放送分野と商業分野を分離し、放送法を改正して娯楽番組にCMを流せるようにすることで賄えばいい。
NHKは受信料にしがみつこうとしているが、むしろ受信料依存から脱することで生き残る道が拓ける。通信で番組を提供すれば設備投資のコストが減り、経営をスリム化しやすくなる。しかも、NHKはアーカイブスなど価値が高い豊富なコンテンツ資産を持っているから、映像コンテンツの販売をビジネスの一つの柱にすることが可能だ。
Eテレ売却から始まる改革は、国民には受信料を大きく引き下げるメリットがあり、NHKもスリム化で必要な投資が減る。そうした前向きの改革を促すきっかけになるはずです」(高橋氏)
実は、菅首相は総務大臣時代、「受信料2割値下げ」を要求してNHKにバトルを挑み、一敗地にまみれた経験がある。以来、ひそかに受信料値下げとNHK改革を狙っているという見方がある。
高橋氏は内閣官房参与として腹案を菅首相に提案したのだろうか。
「菅さんがどう思うか知らないよ。Eテレ売却なんて聞いたら、菅さんに呼び出されて、“高橋さん、スゴイこと言ってるね”と言われるかもしれないが、NHK改革の要点は、地上波の周波数帯を通信に移すということ。
菅内閣の政策であるデジタル庁をつくって電子政府にしたとき、通信の周波数帯を増やしておかないと、そこでスタック(回線が動かなくなる)してしまう。この改革は携帯料金値下げにもつながるし、理屈は通っている」
果たして、菅首相はNHKの膨張に大ナタを振るい、受信料を下げることができるのだろうか。
※週刊ポスト2020年12月11日号