新型コロナウイルス感染拡大の“第3波”が日本を襲い、新規感染者が過去最多になったとのニュースが連日更新されている。それを受けて、政府は「Go Toトラベル」の運用見直しを検討しているが、はたしてどこまで効果があるのだろうか。今後のコロナ感染拡大を抑制するために何が必要か、経済アナリストの森永卓郎氏が解説する。
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日本全国の新型コロナウイルスの新規感染者数は、2020年10月から再び増加傾向が顕著となり、12月1日には累計感染者数が15万人を超えた。11月下旬からは1日の新規感染者が連日2000人を超えて推移している格好だ。
欧米各国でも、新型コロナの感染拡大にまったく歯止めがかからず、アメリカでは11月27日の1日当たりの新規感染者数が20万人を超えて過去最多を更新。その後も衰えを見せていない。
欧州では感染が急拡大したため、フランスでは10月30日から全土で仕事以外の外出が禁止され、イギリスでは11月5日から国土の大部分を占めるイングランド地域で4週間のロックダウンが実施された。イタリアでも11月6日から12月3日まで、全土での夜間外出禁止令を出すとともに、北部地域では不要不急の外出が禁止となった。
新型コロナの感染拡大がここまで深刻化した一番の原因は、欧米も日本も同じだ。人の移動だ。欧州では、夏のバカンスで人の移動が大きく増加したことのツケが回ってきたといわれている。一方、日本はGo Toキャンペーンで、政府が人の移動を推進している。その結果、日本の感染拡大の第3波が始まったのではないか。
7月初めから東京を主な起点として拡大した感染の第2波は、8月上旬にピークを打って収束に向かい、9月には東京以外の地域の新規感染者数は落ち着きをみせていた。
ところが、Go Toトラベルの対象に、10月1日から東京発着が追加された。そして、それからタイムラグの2週間を経て、明らかに“東京以外”の感染が増えたのだ。特に東京に隣接する神奈川、千葉、埼玉の南関東3県の感染拡大が顕著となり、さらに大阪や愛知という大都市の感染も深刻になっている。
しかも、今回の第3波では、さらに困難な事態が重なることとなった。北海道の爆発的な感染拡大である。こうした第2波を上回る第3波の猛威に直面して、菅政権はGo Toキャンペーンの運用見直しに、ようやく重い腰を上げた。だが、見直しの決断が遅すぎた感は拭えず、さらに全国ではなく、対象地域を目的地にする旅行だけを制限するという施策なので、どこまで感染拡大を阻止できるのかは、はなはだ疑問だ。