この家事労働に従事できなかった期間は、入院中などのように家事労働が物理的に不可能であった期間だけでなく、通院中や自宅療養でも交通事故の受傷の結果として家事労働に支障があれば賠償の対象になります。しかし、その受傷の程度に応じて家事労働の制約の程度はさまざまですから、必ず平均賃金相当の損害が100%認められるということではなく、家事労働に支障が生じた程度によってその割合が違ってきます。
政府管掌の自賠責保険の支払基準では、休業による収入の減少があった場合を休業損害とし、1日原則6100円で計算しますが、「家事従事者については、休業による収入の減少があったものとみなす」と明記されています。
保険会社は専業主婦を理由に休業損害を拒否できないことは百も承知のはずです。担当者は、交通事故の状況に照らして家事労働ができなかったという訴え自体に疑問を持っているのかもしれません。その場合、家事労働ができなかったことと、それが事故により発生したことの説明が必要です。診断書や交通事故証明書、入通院の経過がわかる資料を整理し、事故の状況や家事ができない状況を詳しくメモにしたうえで弁護士会の交通事故相談を受けることをおすすめします。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2020年12月10日号