税コストを下げる制度を利用しない手はない
投資のコストには、金融機関に支払う手数料と、国家に納める税金がある。iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ/少額投資非課税制度)では、国民の資産形成のために政府がさまざまな税を優遇している。これによって資産運用の税コストを下げることができるのだから利用しない手はない。個別株の投資は、iDeCoやNISAを限度枠いっぱい使って、それでも投資資金が余ったときでじゅうぶんだ。
「魅力的な投資商品」として、円建てで高い金利を提供する外貨建て高利回り債や外貨建て保険がある。大手証券会社、銀行、保険会社などは年利3%とか5%とかの高金利を派手に宣伝しているが、ブラジルレアルやトルコリラのようなマイナー通貨に投資し、為替レートが一定水準を超えると外貨で償還される特約がついている。
商品設計としては、ハイリスク・ハイリターンの債券(ジャンク債=くず債券)と、高金利だがハイリスクなマイナー通貨のオプションを組み合わせ、とんでもなく高い手数料を上乗せしたものだ。デリバティブの基本を知っていればどのような仕組みになっているか理解できるが、理解できるひとは相手にしない。
資産運用のもうひとつの鉄則は、「自分が理解できないものには手を出さない」ことだ。興味があるなら、先物やオプションを使って同じようなポジションを自分で組むことができるし、そっちの方がずっとコスパがいいだろう。
※『マンガ 投資のことはなにもわかりませんが、素人でも株でお金持ちになる方法を教えてください』(橘玲/著、北野希織/漫画)より抜粋して再構成
【プロフィール】
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などベストセラー多数。金融・人生設計に関する著作も多い。