8割の家庭で収入減、心も荒んでボロボロに
一方で、テレワークができない職種の人たちも間違いなく存在する。飲食業や観光業など、接客を伴う仕事は特に大打撃を受けている。5月25日にようやく全国で緊急事態宣言が解除されたが、自粛生活のしわ寄せは家計にも容赦なく忍び寄った。総務省の家計調査によれば、4~5月の2人以上勤労者世帯の8割は収入が減少している。6月には実収入が急激に上昇するが、これは一律10万円の特別定額給付金が入ったことによるもので、以降も減少傾向は続いている。
福利厚生の食事補助サービス「チケットレストラン」を運営するエデンレッドジャパンが全国の高校生以下の子供を持つ30~50代の男女600名を対象に行った調査では、約5割が給付金に「満足していない」と回答。年収300万円以下の家庭に絞れば、7割以上が「足りない」と回答した。さらに7割以上が「金銭的余裕がない」とも答えている。栃木県で飲食店を営む齊藤由子さん(48才・仮名)が話す。
「コロナで客足は激減し、月の収入は3分の1近く減りました。私と夫は朝食兼昼食を見切り品の菓子パン1個で済ませることがほとんどで、中学生で食べ盛りの娘には間食をがまんさせなければならないこともありました」
収入の減少はおろか、失業問題もある。3~4月の年度替わりとも重なってか、4月は就業者が前年同月差107万人減となった。コロナ前は2%台だった失業率が8、9月には3%台に上昇し、8月末日時点で解雇・雇止めになった人は見込みも含めて5万326人。これはハローワークなどが把握できた人数であり、実際にはさらに多くの失業者が出た可能性が高い。兵庫県に住む青木依子さん(20才・仮名)が唇を噛む。
「観光バスの運転手だった父が、コロナで仕事を失いました。美容師になりたくて専門学校に通っていたのですが、家にお金を入れるため泣く泣く退学。ホステスの仕事も時短営業でシフトに入れなくなり、いまは宅配便の仕分けと掛け持ちしています。“弟を大学に行かせてあげたい”と両親に頼まれ、寝る間もなく働いています」