今年10月、NHKは国民にテレビの設置有無の届け出を義務化し、未契約者の氏名や転居先の住所などの個人情報を公益企業などに照会できる制度の創設を総務省に要求。これが報じられると「個人情報保護法に抵触する」などの批判が相次ぎ、ネットで大炎上した。
総務省の有識者会議は中間報告(案)で2つの制度の創設を見送る代わりに、受信料逃れの世帯に「割増金」の“罰則”を課す方針を打ち出した。
しかし、NHKは「届け出義務化」や「照会制度」を諦めていない。前田晃伸会長は12月3日の記者会見でこう語っている。
「設置の届け出については、基本的に一定の意義があるということでご理解をいただいたと私は思っております。一方、居住者情報の利活用(照会制度のこと)については、今の個人情報保護制度の壁みたいなものがありまして、政府も、これを見直そうという動きがございますので、その見直しが行なわれた後にでも、もう一度検討していただけないかと思っております」
なぜ、高収益なのに徴収強化を図るのか。『NHK独り勝ちの功罪』などの著書があるジャーナリスト・小田桐誠氏が語る。
「受信料の算定方法は総括原価方式と呼ばれ、『これだけの費用がかかるから、これだけの料金になる』と決められる。だからNHKは受信料収入が増えると、値下げして視聴者に返すのではなく、BS4KやBS8Kなどチャンネルを増やし、どんどん予算をつけて事業を拡大してきたのです」
スリム化とは正反対の方向に進んでいるという指摘だ。
※週刊ポスト2020年12月25日号