──具体的には?
現在好調なのが、2016年から販売している手洗い練習スタンプ「おててポン」です。手のひらにハンコを押して、それが消えるまで、30秒ぐらい丁寧に手洗いをしてもらう。いわば「手洗い啓蒙スタンプ」です。コロナ禍で一気に人気になりました。
子育て世代への定番商品には「おむつポン」もあります。乳幼児を保育所に預ける際、おむつに記名が必要なことが多いのですが、このスタンプを使えば名前を書く手間が省け、サインペンのように文字がにじむこともない。
他には「お着替えできるポン」という商品もあります。子供が正しい向きで着替えられるよう、衣服の内側に押すスタンプです。パンダや猫のイラストと目が合ったら正しい向きで服を着られているということ。働く親御さんの“時短”にもつながります。
──子供向け以外では?
QRコードと名前を一度に押せる「myQR」という商品もあります。名刺や年賀状、履歴書などに捺印しておけば、スマホで読み取ると登録したSNSやブログ、動画サイトにアクセスすることができる。紙には書ききれない情報を相手に伝えることができます。
他にもハンコには、さまざまな用途があると思います。以前、ネット上で「しつこい痴漢には安全ピンを刺してしまえ」みたいな話が持ち上がった際、当社の社員が「それでは軽犯罪になるのでハンコにしませんか」とSNSで発言したところ、大きな話題になりました。
それをヒントに、試験的に「迷惑行為防止スタンプ」を自社のアンテナショップ限定で出してみたら、わずか30分弱で売り切れました。防犯や防災といった観点からもハンコの潜在需要が大きいことがわかりました。
【プロフィール】
舟橋正剛(ふなはし・まさよし)/1965年愛知県生まれ。1992年米リンチバーグ大学経営大学院修士課程修了。1993年電通入社。1997年シヤチハタ工業入社。2006年から現職。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
撮影/山崎力夫
※週刊ポスト2020年12月25日号