2020年の株式市場では、テスラ(TSLA)の株価急騰が大きな話題の一つとなった。12月中旬の株価は3月の安値から10倍弱まで跳ね上がっている。時価総額はアメリカ市場で第6位。ウォールマート、ジョンソン&ジョンソン、JPモルガン、ビザなどを超えている。日本最大の時価総額を誇るトヨタと比べても、約2.7倍の規模まで成長している。
もっとも、新エネルギー自動車メーカーの中で、テスラだけが急騰しているわけではない。中国本土の新興電気自動車メーカーでニューヨーク市場に上場する上海蔚来汽車(NIO)の株価は、3月の安値から約22倍も上昇している。同じく本土の新興電気自動車メーカーである小鵬XPEV(XPEV)は8月にニューヨーク上場を果たしたばかりだが、直近の株価は初値の約2.5倍となっている。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が出資する香港上場のBYDは同じく3月の安値から約5.5倍に上昇している。
自動車産業の勢力図は、新エネルギー自動車の急速な普及によって大きく変わると投資家たちは確信している。だからこそ、関連銘柄がここまで買われるのであろう。
日本ではあまり注目されていないが、アップルも新エネルギー自動車を作るようだ。台湾を代表するハイテク関連メディアであるDigiTimesなどによれば、「アップルはアメリカで自動車生産ラインの建設を計画中で、自動車電子部品サプライヤーと技術規格などについて話し合いを行っている。また、台湾セミコンダクター(TSM)と自動運転用チップに関して共同開発を進めている。2024~25年あたりには、“アップル・カー”が登場するだろう」などと報じている。
アップルがスマート新エネルギー自動車の開発を目的としたタイタンプロジェクトを始めたのは2014年であった。テスラをはじめ、トヨタ、日産など世界中の優秀な自動車メーカー出身者を雇い入れたことで一時大きな注目を集めた時期もあった。しかし、プロジェクト自体はあまりうまくいかず、研究開発の重心は自動運転領域に移っていったという報道も見られたが、自動車生産計画は実際には水面下で着々と進んでいたようだ。
テスラのモデル3もそうだが、ほとんどの新エネルギー自動車はスマホで操作できる。スマホに話しかけることで離れた場所から車を呼んだり、駐車させたりすることが可能だ。今後、通信手段の主役はスマホからスマートウォッチに変わるかもしれないが、アップルブランドを好きなファンにとってはそんなことはあまり気にならないだろう。
テスラの登場によって、自動車という製品は、ハードだけでなく、ソフトによっても差別化が可能だということがはっきりしてきた。アップルが参入し、自動運転技術がもう少し進歩すれば、ソフトの差によって、競争力が決定されるような時代が訪れることになりそうだ。