「その日は少し長めに入浴をしていました。ついつい仲間との会話も弾んでしまい、気づいた時には16時50分。慌てて上がって支度をしたんですけど、古株の会員女性が『時間!時間!』と、杖でドンドンと床を突き、私に早く帰るよう言ってきたんです……」
安田さんの通うフィットネスクラブの大浴場には、いつも決まった高齢者たちが長風呂をしているという。主婦や若い人などはシャワーで済ませることが多いようで、大浴場を利用している光景はあまり見ないそうだ。
指摘された安田さんは慌てて支度したものの、施設を出る時は17時を少し過ぎてしまった。スタッフから厳重注意を受けたこともあり、次からは時間内に帰るように気をつけていたものの、知らないうちに根も葉もない噂がフィットネスクラブ中に広がっていたという。
「私のことを『貧乏になったからデイタイムにした』とか、『フィットネスクラブを不正利用している』など言い始める人が出たんです。古株の女性は80代で噂が大好き、発信者は絶対にこの人だと思いますよ。私なりの考えがあって変更しただけなのに……、本当はゆっくり利用したいです!」
安田さんの一件以来、17時になるとスタッフがベルを鳴らしに来るようになったそうだ。現在は指摘されることがないよう、自主的に16時までの利用を意識し、陰口を言っていると思われる仲間とは距離を置くようにしたという。今でも何か言われているのではないかという不安はあるものの、時が解決してくれることを信じ、毎日通っているそうだ。
新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活は大きく変わった。感染者数は増える一方で、すでに一部では医療崩壊も指摘されている。より一層、気を引き締めていく必要があるだろう。お互いを気遣いながら頑張らなくてはいけない時期に、根拠のない噂で人を貶めるのはいかがなものか。