田代尚機のチャイナ・リサーチ

バブルを抑制すべきか維持すべきか 米中で対照的な金融政策

アメリカ株のバブルはいつまで続くのか(ニューヨーク証券取引所。EPA=時事)

 中国は資産バブルの発生を警戒している。中国人民銀行、銀行保険業監督管理委員会は2020年12月31日、「銀行業金融機関の不動産貸出集中管理制度作成に関する通知」を発表した。この通知によれば、金融機関はグループ分けされ、グループごとに不動産向けの貸出比率、個人住宅ローン比率に制限が課せられることになる。実施日は2021年1月1日、即日実施である。

 猶予期間が設けてあり、それほど厳しい制限ではない。ただ、それでも、各行は政策発動を受けて、不動産開発向け融資、住宅ローンの獲得活動を当面、控えざるを得ないであろう。地方の中堅都市銀行の中には、不動産融資に傾倒しているところがある。そういうところの行き過ぎた貸出にストップをかける効果は大きい。

 資産バブルといえば、株式市場もリスクが高い。昨年の上海総合指数は、1年間で13.9%上昇した。日経平均より少し低いが、NYダウやTOPIX、ハンセン指数などと比べれば高い。もっとも、昨年末の終値は、2015年前半の大相場で記録した高値からは33%安く、2007年10月に記録した過去最高値からは43%も安い。上海の市場平均PER(株価収益率)は1月11日現在、17倍である。歴史的な推移から見ると、安くはないかもしれないが、高くもない。

 2006~2007年、2009年前半、2015年前半など、本土市場では明らかなバブルが発生した。中国株式市場の歴史を振り返ってみると、【1】短い期間での急激なバブルの発生と当局のそれへの対処の遅れ、【2】強烈な市場粛清とその結果生じる急落、【3】投資家の消失とその後の長い低迷、【4】底打ち後の緩やかな上昇といったサイクルを繰り返している。

 ただ、一つのサイクルが終わるたびに当局は監督管理の方法をより周到にしており、バブル予防を重視するようになっている。

「バブルを発生させるのは簡単だが、それを始末するのは非常に難しい」──。これは歴史が我々に教えてくれる教訓である。

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