都心のオフィスビルへの通勤、昼休みには話題の店でのランチタイム、退勤後の道すがら飲み屋や商業施設に立ち寄る……。コロナ禍の外出自粛で在宅勤務が推奨されたことで、失われつつある光景だ。
在宅勤務なら、通勤から解放されることが大きなメリットとなる。ところがその一方で、それをデメリットとして捉える人たちも少なからずいるようだ。彼ら/彼女たちが職場への通勤を通して培ってきた思いとは何か。
都内有数のオフィス街・丸の内に位置する大手企業に新卒入社し、5年目になる20代男性・Aさんは、昨年の緊急事態宣言以降、原則在宅勤務になった。通勤できないことが、寂しくてたまらないと話す。
「僕は東北出身なのですが、東京のど真ん中で、林立する巨大ビルのなかで働くことに憧れて上京した側面もあります。こういうビルの大企業で働ける自分が自信にもなっていました」(Aさん)
立派なオフィスビルに加えて、机と椅子が並ぶ広いミーティングスペースやカフェテリアのような社員食堂では、社員同士が活発にミーティングや雑談に勤しむ光景が広がっていた。しかしAさんは今、オフィス近くのワンルームに一人ぼっちだ。その落差に苦しんでいる。
「オフィス街で、他社のスーツ姿で働いている人たちを見ているのも好きでした。刺激になるというか……。高層階から窓の外を見ると多くのオフィスビルが目に入り、『こんなにたくさんの人がそれぞれ頑張ってる』と思うと、モチベーションも上がったものです。都会とはいえワンルームマンションでは、そんな気持ちにはなれません。せっかく東京に来たのに、と自問自答する日々です」(Aさん)