4月施行の「70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)」によって、65歳以降も働くのが当たり前の時代がやってくる。60代の人の働き方が多様になるため、リタイア後に必要な資産を考えるにあたって、個々人の“変数”が今までより複雑になる。
だからこそ、将来設計を考えるうえでの基本を学ぶことが重要になる。
「60歳以降の支出は夫婦2人で、約8000万円かかるといわれます。そう聞くと漠然と不安を感じる方が多いのですが、早いうちから収入と支出の将来像をイメージし、必要な見直しをしていけば、安心した生活を送ることは十分に可能です」
こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの小谷晴美氏だ。
総務省「家計調査年報2019」によると、夫が働いている夫婦2人世帯の支出は、60~69歳で月額約29万円。70歳以上は月額約24万円になる(別掲図参照)。
平均寿命(男性81歳、女性87歳)まで生きるとすると、60歳以降の総支出は約8000万円になる。
この金額はあくまで食費など生活にかかる支出の平均だ。大きなケガや病気の際の医療費、老人ホームの入居費などは別途かかる。前出の小谷氏が言う。
「だからといって、必要以上に不安にならなくてもいい。退職金や平均寿命まで約20年にわたって受け取れる年金の収入は数千万円あるのが一般的です。
それらを加味しながら、老後資産は十分なのか、あるいは不足する可能性が高いのかをチェックしたい。足りなくなりそうであれば、収入と支出のバランスを見直していきましょう」
老後破産を避けるためには、現役時代から備えておくよう心がけたい。
※週刊ポスト2021年2月5日号