感染拡大防止のために人同士の物理的な接触を控えざるを得ないコロナ禍は、一方で社会の分断という副作用ももたらしている。チョコレートを贈り合う2月14日のあの恒例行事も、例年通りとはいかないようだ。フリーライターの吉田みく氏が「会社でチョコが渡せない」と嘆く30代女性に話を聞いた。
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化学メーカーで事務職として働く都内在住の野島愛さん(仮名・36歳)は、「毎年バレンタインを楽しみにしていたのは、社内で私だけだったみたいです……」と肩を落とした。
以前から様々な意見が飛び交っている“バレンタイン問題”。特に職場などでの「義理チョコ」「義務チョコ」には「必要ない」と否定的な声も多い。贈る側だけでなく、受け取る男性側の「お返しが大変」「お金がかかる」などの事情も理由として挙げられるようだ。
一方、女性同士で交換し合う「友チョコ」や、自分のために高級チョコを購入するなどの楽しみ方も増えてきている。伊勢丹や高島屋などのデパートでは毎年催事が行われ、賑わいを見せている。様々な形でバレンタインを楽しむ人も増えてきているように感じる。
「2回目の緊急事態宣言が出された頃、上司が朝礼で『今年は感染症対策の観点から、社内でバレンタインチョコを渡すのは控えましょう』と言い出したんです」(野島さん、以下同)
野島さんの会社では、女性社員が男性社員に対してバレンタインチョコを渡すことが恒例行事になっている。それぞれ1000円ほどのお金を出し合い、チョコを購入して渡しているそうだ。
それとは別に、野島さんは同じ部署の仲間に手作りチョコを渡しているという。毎年「ありがとう!」と喜んで受け取ってくれる仲間の顔を見るのが嬉しいと、野島さんは話す。お菓子作りが趣味なので、生チョコレート、ブラウニー、フォンダンショコラといった手の込んだものばかり渡してきたそうだ。