夫が定年を迎えて、毎日家に居続けるようになったことで、それまで知らなかった姿を目の当たりにするということも多いだろう。とくに気を付けなければいけないのは金銭感覚だという。定年後の生活に必要なお金は、業務のために会社のお金を使っていた感覚とはまるで違う。
《夫65才以上、妻60才以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円。まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万~2000万円になる》
これは2019年に「老後2000万円問題」として日本中から大きなどよめきが上がった金融庁の報告だ。長寿化により老後のお金が足りなくなる事態が現実に起こり始めることを、国も憂慮していることになる。
実際、2020年に介護福祉関連会社である『ガネット』が行った調査によれば定年を迎えた人の9割が老後の資金について悩みや不安を抱えていたという。特に夫の金銭感覚を会社員時代からサイズダウンさせることの難しさを痛感する妻は多い。
『定年ちいぱっぱ 二人はツライよ』(毎日新聞出版)の著書がある小川有里さんが、こんなエピソードを明かす。
「私の友達の話ですが、定年したばかりの夫が『会社の近くのランチがおいしかったから行こうよ』と言うのでついて行ったら、想像以上に高かったと話していました。いつまでも現役時代の接待費が使える感覚でいて、家庭料理との金額差を知らなかったようでした」
定年まで料理も買い物もしたことがなければ、食料品の値段がわからないのも無理はない。手っ取り早いのは、一緒にスーパーマーケットへ行くことだ。
「豆腐1丁、卵1パックがいくらで売られているのか知らない男性は意外と多いです。陳列ケースに並ぶ食材の値段を見せて『妻はこんなに安く材料を買って料理しているのか』と知ってもらうことは、本人のためにもなる。スーパーに行くようになって、夫が無駄遣いをしなくなったという声もよく聞きます」(小川さん)
※女性セブン2021年2月18・25日号