2月15日に申請が締め切られた「持続化給付金」は、コロナで売り上げが落ち込んだ事業者の支援・救済を目的とする制度だった。中小企業は200万円、個人事業主は100万円を上限に給付金が受け取れる仕組みで、支給総額は約5.5兆円にのぼる。
だが、事業実態がない者が、確定申告書や売上台帳を偽造するなどの手口で不正申請するケースが全国で多発。税理士や税務署職員が専門知識を悪用し、給付金を騙し取る事件も相次いだ。警察庁によると2月10日までに全国44都道府県で509人が摘発され、被害額は立件された分だけで4億円に達している。ライターの奥窪優木氏が指摘する。
「私が取材した詐欺グループのメンバーは『今は(給付金の)ボーナスステージだ』と言い放ちました。持続化給付金に代わり、最近は、生活福祉資金貸付制度の『緊急小口資金』と『総合支援資金』が食い物にされています」
これらは収入減少世帯のための貸付制度で、併用も可能。現在は特例により、無利子無担保で最大200万円まで借り入れることができる。
「申請は1世帯単位ですが、同じ家に住みながら住民票上の世帯を分ける『世帯分離』の届け出をし、それぞれ貸付を受ける者がいる。償還時に住民税非課税世帯であれば返済免除となるため、経営者や個人事業主が所得をコントロールすれば、返済を免れることが可能となってしまう」(奥窪氏)
同資金貸付の窓口を束ねる全国社会福祉協議会の担当者がいう。
「膨大な申請があり、性善説に立ち迅速性を優先して審査している。申請すべてを精査するのは困難なのが実情」(民生部)
不正が堂々とまかり通ってしまっては、正直者が報われない。
※週刊ポスト2021年3月12日号