一方、お義母さんは組合契約に基づき、当せんしたら当せん金の分配を要求できます。とはいえ、立替金を当せんが判明するまでにあなたに返せばともかく、まったく支払わないまま、当せんしてから当せん金だけを権利主張するのはおかしいと感じるでしょう。
宝くじは、購入金額に比べて当せんすると大きな利益がありますが、それが当せん発表までわからないところがミソです。当せんがわかって購入代金の立替金を支払うというのでは、まるで当たり馬券を買うようなものです。
組合契約では、不届きな組合員をほかの組合員の全員一致で除名できます。除名できれば当せん金分配の必要はありません。ところが、あなたとお義母さんのように組合員が2人だけの場合は、全員一致があり得ないので除名はできません。しかし、お義母さんの分配金請求は民法の「信義誠実の原則」に反し、権利の濫用といえます。ですから、分配を断っても法的には問題ないと考えます。
不思議なのは、お義母さんがどうして当せんを知ったかです。くじの番号を教えておくか、当せんを知らせない限りわからないはずです。あなたがお義母さんに購入代金の分担を求めずにこうした情報を伝えたとすると、当せんした際に分配するという姿勢を示していたことになり、お義母さんが当せん金の分配を期待するのも無理はありません。
分配金は5万円で決して少額ではありませんが、元々あてにしていたお金ではないと思います。生活に不可欠というのでなければ、ここでことを荒立てるのがよいかどうかをよく考えて判断してはいかがでしょうか。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年3月11日号