企業概要
武蔵精密工業(7220)は、自動車部品のトップメーカーで、四輪車・二輪車に搭載される部品の製造・販売を主な事業としています。取り扱う製品は、パワートレイン部品・サスペンション部品・ステアリング部品・トランスミッション部品など、エンジンやギア、足回り関連が中心で、中でも二輪車向けトランスミッションでは、世界32%のトップシェアを誇ります。
【1】主力のPT事業(Power Train)では、カムシャフト(エンジンの吸排気バルブの開閉タイミングを制御)、トランスミッションギヤ・プラネタリィアッセンブリィ(エンジンの回転を走行に適した回転数に変換し伝達)、デファレンシャルアッセンブリィ(左右の車輪に回転差をつけカーブを曲がりやすくする)を展開。
小型車から大型車までの各トルクバンドに対応したMSデフをシリーズ化し、それぞれの車両に最適な小型・軽量、低コストなデファレンシャルアッセンブリィを供給できる体制を構築しています。
【2】二輪事業では、二輪車、汎用エンジン、ATVなどに使用されるトランスミッションアッセンブリィ、カムシャフト、その他の駆動系部品を展開しています。
【3】L&S事業(Linkage and Suspension)では、タイヤと車体を繋ぐ部品に使用されるボールジョイント(ハンドルと車輪、車体と車輪を繋ぎ、路面からの振動を吸収)が主力で、自動車の操作性向上に貢献しています。
事業別売上構成比は2020年3月期実績で、PT事業67%、二輪事業26%、L&S事業7%となっています。
同社はこれらの事業を、世界14か国35拠点で展開するグローバル企業で、海外売上比は85%に及びます。日本以外の地域については、米国24%、欧州26%、アジア26%、中国9%と、程よく分散されています。地域別での売上分散はリスク低減の効果をもたらし、コロナ禍ではいち早く経済回復した中国が業績の下支えとなりました。
また、主要顧客についても分散が進捗しています。
注目ポイント
業績は急回復しており、通期計画の上振れも期待されるところです。コロナで影響ありましたが、自動車メーカーの回復が即効反映されるのは、同社製品に強みがある証だと思います。
同社は、徹底した内製化を強みとします。金型設計・鍛造・切削・熱処理から組み立てまで全て自社で行っており、製品の小型化や軽量化など顧客ニーズに細かく対応できる体制としています。この一貫体制により、自動車産業で求められる、電動化・環境対応といった自動車産業における新たなニーズを捉えることが出来ているのは注目点です。競争が激しい自動車産業にとってはほんの少しの遅れがシェア欠損に繋がることから、ニーズに細かく答えてくれる優秀な部品メーカーと出会えることは生き残りをも左右するところと思います。
実際同社は今期だけでもホンダグループの他に3つの大手メーカーから受注を獲得するなど、成長軌道に乗っており、今後もConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)、いわゆる「CASE」の領域で求められる需要を獲得していけるポジションにあると思います。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。