米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメント(以下、アルケゴス)の破綻に伴い、野村ホールディングスやみずほフィナンシャルグループなど、日本の大手金融機関でも巨額の損失計上の可能性が報じられている。はたしてアルケゴスの破綻が今後の金融市場にどのような影響を与えるのだろうか。カリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが今回の騒動による市場への影響と、投資家が覚えておくべき教訓を解説する。
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アルケゴス破綻の余波が、世界の金融市場を襲っています。日本企業でも野村HDが約20億ドル(約2200億円)の損失を計上すると報じられていますが、現時点で損失額は確定していないようです。他にもアルケゴス関連の損失を計上するであろう、大手金融機関の名前が続々と挙がっています。
アルケゴスは、米ヘッジファンドであるタイガー・マネジメントの元トレーダー、ビル・フアン氏の財産を管理・運営するファミリーオフィスです。同社は様々な金融機関を通して、巨額の投資を続けていましたが、今年3月、マージンコール(追証)が発生した際、投資維持に必要な資金を支払うことができず破綻。アルケゴスの運用資産は100億ドルを超え、その資産にレバレッジをかけて取引していたため、500億ドル(日本円で約5兆円)規模のポジションを保有していたとも市場関係者の間では囁かれています。
アルケゴスの取引に関わっていた金融機関は、アルケゴスが抱えていた巨額ポジション決済の際に損失が発生している可能性もあります。5兆円にかかるマージンコールと考えると恐ろしい金額で、詳細な金額はまだ公表されていませんが、数千億円規模になるといわれています。
ファミリーオフィスはSEC(米国証券取引委員会)に登録義務がないため、ヘッジファンドで運用するような金額規模でも、この形態で運用することが近年増えていました。今回の騒動により、ファミリーオフィスの仕組みには当局のメスが入っていくことでしょう。やはりこれだけのリスクが取れるのに運営情報の開示義務がないというのは違和感があるところです。
アルケゴス破綻により、取引に関わっていた金融機関も破綻に追い込まれるほどの影響が出るのか注目されていますが、現段階では「破綻リスクは考えにくい」といえそうです。今回の騒動に関連する一部金融機関の昨年の純利益を見ると、仮に今回、巨額の損害が発生したとしても、破綻まではいかないと思われます。もっとも短期的には株価に影響が出るところもあるでしょうが、むしろ株価が下落したタイミングを買い場の好機と捉える人もいるかもしれません。