しかし、失踪者が生存することが証明されると、家庭裁判所は本人や利害関係人の請求により、審判で失踪宣告を取り消します。その場合も、裁判所の審判書などを役所に提出すれば、戸籍上で失踪宣告を取り消す旨の記載がされた上、改めてご主人の出生事項や婚姻事項などの記載がされます。
そして、失踪宣告が取り消された場合、「失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う」と定められています。
つまり、生命保険金を受け取る権利を失い、保険会社に返す義務が生じます。“但し書き”に「現に利益を受けている限度」とあるので、残った分だけかといえば、そうではありません。お金は現存していると推定され、失われたことを証明する必要があります。
ただ、保険金を何かに使えば、その分、別にお金が残っているはずだから、その証明は困難です。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号