環境問題の解決に積極的に取り組むビル・ゲイツだが、彼が人工肉の分野に投資するのは人工肉の普及がそうした問題の解決に大きく貢献すると考えているからだろう。
インポッシブル・フーズによれば、この製法により“肉”を作り出せば、伝統的な家畜生産で使われる水の75%を節約することができ、温室効果を発生させる気体(家畜のゲップ、放屁など)の87%を減らすことができる。飼育に必要な土地(面積)の95%を減らすことができる。さらに、成長ホルモン、抗生物質、コレステロール、人工香料などを含まないから、非常に健康的な食品だとさえ主張している。
もっとも遺伝子組み換え食品に対して拒否反応を示す消費者は少なくない。今後も、グローバルに広く人々から受け入れられるようになるためには、地道に安全性の評価を重ねていく必要があるだろう。とはいえ、世界的に食糧増産のニーズは大きい。また、既存の農業と比べ、こうしたバイオなどの最先端技術を利用した新しい産業は、今はやりのSDGsにも合致する。
成長性が低く、事業としては“うま味の少ない産業”とみられていた伝統的な第一次産業だが、こうした分野にも技術革新の波は確実に訪れている。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。