そんなAさんは、「東大修士課程修了」という学歴を持ったことで、新たなプレッシャーも生まれたようだ。学歴コンプレックスは緩和されたが、「本当に自分はこの学歴に値する人間なのか」とその重さを思い知る機会が多くなったという。「内部生は本当に優秀な人が多くて、胸を張って東大とは言えない自分がいます」と語る。
東大から私大院で「逆学歴ロンダリング」?
私大文系から理工系国立大学の大学院に進学したことで、周囲から「学歴ロンダリング」を指摘される人もいる。IT企業で働く20代女性・Bさんだ。そもそも文系出身者が、なぜ理工系大学の大学院に進学したのか。
「理工系の大学には理系の専門分野しかないと思われがちですが、実は院には社会・人間科学系の研究室もあって、私が入ったところには、かなり私大文系卒の人もいたので、そんなに珍しくはなかったと思います」(Bさん)
Bさんが大学院に進学した動機は、「すぐ就職したくなかったから」だという。とはいえ、フリーターとしてフラフラするわけにはいかず、大学院への進学を選択した。
「まだ学生でいたい、就職したくないという気持ちがあったところに、どうせなら“ハク”を付けたいと思ったんです。私大文系とは真逆のイメージがある国立理系なら、全然知らない環境っぽくてワクワクしましたし、人に言うような時もインパクトがあるかなと思いました。あちこちで『学歴ロンダリング』とネタにされるんですが、『最終学歴は大切ですから~』と笑ってやり過ごしています。最初はモヤモヤしていましたが、慣れました」(Bさん)
そうした声がある一方で、「逆学歴ロンダリング」と言われてしまった人もいる。東大文系から別の私大院に進学した30代女性・Cさんだ。周囲から経歴を指摘されることが多く、「面倒」だという。
「自分が専攻したい分野に合った研究室を選んだだけなのですが、私の経歴を知った人は、『何で東大を出ているのにわざわざ?』という目線を送ってきます。『東大の院に行けなかったのね』と遠回しに言われたことや、『最終学歴が東大じゃなくなるの嫌じゃないんですか?』と直接的に伝えてくる人も。別に本人がいいなら、それでいいじゃないですか」(Cさん)