「いえ、商品の本体価格は980円ですけど、消費税が10%かかりますから」と説明すると、「わかったよ」とお金を投げてよこされるのはまだいい方。試着して香水のにおいまでつけて、「じゃ、いらない」と突っ返されると、もう売り物にならない。そのうちの何枚かは、“店長のお買い上げ”になるんだって。売り上げが上がらないのに、返品ばかり増えると本部からお叱りを受けるから、「今月はこのままいったら、給料、いくらもらえるかわかんない」って。
だからといって、おいそれと転職先が見つかるはずもないし、「総額表示の義務化、クソくらえだ!」と怒りながら、缶チューハイをあおる娘につきあって、ついつい私の酒量も上がっちゃう。
(二世代バツイチの61才)
取材・文/野原広子
※女性セブン2021年5月6・13日号