老後の親子問題を考えるとき、「金銭」が絡むとその関係はより危ういものとなる。愛知県の50代公務員が苦渋の表情で語る。
「元々金銭管理ができていない親でしたが、勤め先を退職したくらいからお金を無心してくるようになりました。わざわざ電話してきて『新しい家電がほしいから、少しお金がいるなぁ』『ちょっと家をリフォームしたいなぁ』などとあからさまに告げられるようになり、一向にやまないから辟易します。
そのうち親は『欲しいものは息子に頼めばいい』と当たり前のようになり、こちらが躊躇すると『公務員で生活が安定しているから大丈夫だろ』とプレッシャーをかけてくるようになった。あまりに横柄な態度で、うちの妻が怒りを爆発させ、『これまで渡していた金を返してほしいくらい。少なくともこれ以上は無心に応じては絶対ダメだから』とキツく言い渡されました」
この男性はあと数年で定年となり、高齢の親に金を渡す余裕はなくなりそうだという。
「妻の目も光っているし、もう親の無心に応じるのは難しいでしょうね。“金の切れ目が縁の切れ目”となり、親子断絶になるかもしれません」(同前)
際限なく子供に依存しきってしまう親もいる。都内在住の50代女性がうつむき気味に語る。
「母を早くに亡くし、近所でひとり暮らしする80代の父が昨年がんの手術をしました。『退院後の検診はパートがあるから月曜は避けて』と何度も言ったのに、フタを開けたら勝手に月曜に予約。こんな風に、大抵、私の予定は一切無視で動くので怒り心頭です。
がんを患ってから体力のなくなった父は何でも私に頼るようになった。病身の支えにはなりたいですが、私にも仕事や生活があるので、頼り切りにされるのはかなりキツいですね」
鳥居氏は、子を頼る親に一定の理解を示す。
「今の親世代には『子供が親を世話するのは当たり前』という儒教的な価値観が根付いており、なんでも子供に頼る傾向があります。加えて、国が在宅介護を推奨するように、日本社会には家族の連帯責任を求める風潮が残っているので、他に頼るあてのない親が、子供に助けを求めざるを得ない事情があります」