定年まで身を粉にして働いて、貯蓄も充分。ようやく第二の人生を楽しめる──と安心するのはまだ早い。リタイア後に“投資詐欺”に遭い、老後資金を失う人も少なくないのだ。“うまい話”には注意が必要だ。神奈川県に住む今田喜美江さん(68才・仮名)が肩を落とす。
「3年前に退職した夫が、友人の誘いで投資を始めたんです。“数万円を何口かでいいから”と言われ、初めのうちは配当をもらっていたようですが、退職金の3分の1くらいを投資した頃には、配当がもらえなくなっていました。友人を問い詰めても、“本部”と連絡が取れないと言われるばかりで、元手も取り戻せていません。すっかり騙されたようです」
プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「友人からの儲け話は、お金が減るばかりか、人間関係も壊れます。こうした投資詐欺の被害が増えるのも、退職金が入ってから。“数口でいい、損しないネットワークビジネス”といった言葉が常套句です。おそらくその友人も騙されていて、投資による利益と紹介料で“ウィンウィン”のつもりで誘ったのでしょう。しかし、“必ず儲かる、絶対に損しない”という話はあり得ませんから、話を聞いてみて“よくわからないな”と思ったものには手を出さないのが鉄則」
若い頃と違い、年を取ってから投資に走ると、失敗したとき、それを取り返すための時間がないのが恐ろしい。そもそも、リスクを取ってまでお金を増やす必要はない。
「介護や医療は公的制度で補助されるので、自己負担額は思ったほどかかりません。住民税非課税になっていない年金生活世帯が介護サービスを利用する際の上限額(保険給付分)は、月々4万4400円。
医療費も高額療養費制度によって所得に応じた自己負担の限度額が決まっているので、仮に月100万円の医療費がかかったとしても、自己負担は一世帯6万円もかからないことがほとんどです」(三原さん・以下同)