投資情報会社・フィスコが6月7日~6月11日のドル円相場の見通しを解説する。
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今週のドル円は伸び悩みか。米連邦準備制度理事会(FRB)は大規模な金融緩和策を長期間維持する方針を変えていないようだ。ただ、米国経済の正常化によってインフレ進行の可能性は高まっており、雇用情勢も改善しつつあることから、資産買入れ規模の段階的縮小(テーパリング)に対する市場の期待は根強い。欧州中央銀行(ECB)は現行の金融緩和策を長期間維持する可能性が高いことから、ユーロ買い・米ドル売りがただちに拡大する可能性は低いとみられており、ドル円の取引にも影響を与えそうだ。日本での緊急事態宣言の期限延長を受けて日本経済の停滞によるリスク回避的なドル買い・円売りも観測されており、ドル円は心理的な節目である110円を再び突破した。
ただ1ドル=110円台では顧客筋などのドル売りが増えるとの見方が多く、短期筋による利益確定のドル売りも増えると予想されていることから、ドル円相場の一段の上昇は想定しにくい。「米国のインフレ率がある程度上昇することは織り込み済み」との声が聞かれており、新たなドル買い材料が提供されない場合、ドル円は主に110円近辺で推移し、やや上げ渋る状態が続く可能性がある。
【米・5月消費者物価コア指数(CPI)】(10日発表予定)
10日発表の米5月CPIは前年比+3.4%で上昇率は4月実績の3.0%を上回る見込み。市場予想を上回った場合、インフレ進行の懸念はくすぶり、ドルは下げづらい見通し。
【米・6月ミシガン大学消費者信頼感指数】(11日発表予定)
11日発表の米6月ミシガン大学消費者信頼感指数は83.0と、5月実績の82.9をやや上回る見込み。新型コロナウイルスの感染縮小が進むなか、個人消費の伸びが確認されれば株高・金利高・ドル高の要因となろう。
・6月7日-11日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。
○(日)1-3月期国内総生産改定値 8日(火)午前8時50分発表予定
・予想は、前期比年率-4.9%
参考となる速報値は前期比年率-5.1%。1-3月期の全産業設備投資額は前年同期比-7.8%で市場予想を下回った。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための経済制限措置は国内経済を圧迫している。個人消費はやや抑制されていることから、改定値は速報値をやや下回る可能性もある。
○(米)4月貿易収支 8日(火)午後9時30分発表予定
・予想は、-681億ドル
参考となる3月実績は-744億ドル。財の輸入額は過去最大となった。輸出額は前月比で増加したが、景気回復による国内需要の増大で輸入額はさらに増える可能性がある。4月については、消費財と資本財の輸入が増える可能性があるが、複数の項目で輸出額は増加するとみられており、貿易赤字は3月実績との比較で縮小する可能性がある。