2人に1人の大学生が奨学金を利用
そもそも久美さんの手取り収入では、毎月3万円を返済し続けるのは難しい。そんな時のために奨学金には、返済額を減らす「減額制度」がある。なぜ制度を利用しないのか。
「もちろん減額制度も考えましたが、滞納している人は滞納金を支払ってからでないと、制度を利用できないのです。12万円もの大金を、今の私にまとめて支払う力はありません。『親に頼ったら?』という友人のアドバイスも受けましたが、父は数年前から病気で仕事ができなくなって、そんな状況に母も参ってしまっているので、金銭面で頼ることはできないのです。
友人からは、『最後の手段として自己破産の道もある』と言われました。もうそれしか道はないのでしょうか……。でも、奨学金を借りておいて自己破産なんて身勝手すぎますよね。奨学金の滞納が続くと、保証人の父に通知されてしまうし、自己破産しても父に請求がいってしまうみたいなので、今の状況が続いて両親を巻き込んでしまうのではないかと心配です」
日本学生支援機構の「平成30年度学生生活調査」によると、奨学金を借りている大学生(昼間部)の割合は47.5%に達し、実に大学生の2人に1人が奨学金を利用しているのが実情だ。一方で、大学卒業後は4割の学生が非正規の仕事に就くと言われている。こうした理由が複合的に重なり、奨学金の返済を滞納する人が近年増えているのだ。アディーレ法律事務所の長井健一・弁護士が話す。
「正規雇用でも若い世代の年収はそれほど高くはありませんが、非正規雇用の増加により、若者の収入は増えず不安定になっています。加えて、厚生労働省の発表によると、コロナの影響による解雇や雇い止めは10万人を超えました(4月7日時点、見込み含む)。このような状況からすれば、奨学金が返せない人は今後さらに増加していくと思います」(長井弁護士・以下同)
では、返済に苦しんでいる人はどうしたらいいのか。
「まずは、一定期間返済を待ってもらう『返還期限猶予』や、返済額を減額する『減額返還』を検討しましょう。減額返還は滞納がないことが条件ですが、返還期限猶予なら滞納があっても申請できます。1年ごとに申請が必要で、猶予期間は通算10年までとなります。それでも無理な場合は自己破産等を検討することになります。その際、保証人が支払いをしなければいけないので、場合によっては親や親戚が破産してしまうケースもあります」