ネットでは「声かけ事案」という話題が注目を集めている。各自治体が“不審者情報”を発表しているのだが、その内容は多種多様。「男が歩いている事案が発生」「男が無言で早足で歩くという事案が発生」など、正直、そこに紹介されている情報だけを読むと、「そんなものまで“事案”扱いされるのか?」と疑問に思うようなものも少なくない。
特に都会では、子供が知らない大人とコミュニケーションを取ることがリスクにつながると考えられがちだが、地方都市では誰とでも挨拶をする子供も少なくない。昨年、東京から佐賀県唐津市に移住したネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、「子供が知らない大人に挨拶することの是非」を考察する。
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近年は、「挨拶」という行為が“反社会的行為”のようになっている面があるようです。2018年6月9日の読売新聞には、こんな内容の投稿がありました。
〈75歳の幼稚園職員の女性がランドセルを背負った女の子に「お帰りなさい。車に気をつけて、おうちに帰ってね」と声をかけたところ、女の子は防犯ブザーを鳴らして逃げていった。投稿者は「やはりおせっかいだったろうか。自分では親切なことをしたと思っても、かえって、迷惑なことがあるのだと痛感させられた」とこの経験を振り返っている〉
マンションのエントランスなどに「知らない人に声をかけられても返事をしてはいけない」といった貼り紙がされるケースもあり、都会では「知らない人=不審者」と捉えることが子供の安全に繋がるといった風潮があります。それに対して「それって過剰では?」「なんで日本はこうなった……」という考えを持つ人たちが「声かけ事案」に反応するわけです。5ちゃんねるのスレッドには以下のようなものがあります。
「帰宅中の女子学生の後ろを男が同じ方向に歩いていたという事案が発生」
「女性が後ろを振り返ったところ、50メートル先で男が立っていたという事案が発生」
他にも“事案”として話題になったのは「この近くのセブン-イレブン知りませんか」と女子高生に声を掛ける男や、下校中の児童に車から「君らあんまり勉強したらあかんで」とハゲ頭を見せた後に去った男、7人の小学生が遊んでいたら「こんな所で遊んでいたらあかん」と声をかけた男。さらには女子小学生に「おはよう」等と声をかけた男も不審者扱いです。