人生の後半戦には、様々な心配事がある。全国の60歳以上の男女6000人を対象にした内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成26年)によれば、将来への不安として、「自分や配偶者の健康や病気のこと(67.6%)」「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること(59.9%)」といった医療、介護の問題を挙げる人が多く、以下、収入面や独居になることへの不安などに続き、「家業、家屋、土地・田畑や先祖のお墓の管理や相続のこと(16.9%)」といった項目が挙がっている。
こうした懸案への備えを考えるなかで、見逃されがちなリスクが「子供」である。妻に先立たれてひとり暮らしの70代男性はこう話す。
「自分の最期はできる限り、住み慣れた我が家で迎えたいと思っていました。知り合いに聞いて、信頼できる在宅医や訪問介護事業者に目星をつけるなど準備を進めていたのですが、先日、2人の息子にそれを話したら“介護が必要になったら、老人ホームに入ってもらわないと困る”と猛反対に遭った。
結局、息子たちも彼らの妻も何らかの負担が生じることを避けたいのでしょう。全く協力が得られないなら、在宅でひとりは難しいのかもしれない……。老人ホームは探していなかったから、準備をやり直さないといけません」
まさか我が子が言い出したことがトラブルの種になるなんて―想定外の事態に慌てふためくことがないように、そのリスクを知っておかなくてはならない。
認知症でも「面倒は見られない」
親子間でトラブルとなるテーマの筆頭が「介護」だ。子供に言われた言葉を鵜呑みにして、大失敗することがある。東海地方に住む70代女性が語る。
「2年前に夫が亡くなった時、離れて暮らす息子から『仕事を辞めるわけにいかず、面倒を見られない。何かあればすぐに駆け付けるから』と言われました。その後すぐに自宅で転んで骨折してしまった。入院保証人のサインを求められたのですが、ちょうど息子は出張中で……」
歳を重ねると、急な入院のリスクが増える。その時に子供の協力が得られないと、様々な問題が生じる。
「その時はなんとか入院はできましたが、今後、要介護状態や認知症になったらと思うと不安で仕方ありません」(同前)