そうすると、その中で自然に恋愛から出産という流れができ、国家が生まれた子供の面倒を見ることが保証されていれば、結婚していないカップルから子供が生まれることが普通になる。
さらに、少子化対策に成功しているフランスの「N分N乗方式」を参考に、“子沢山”世帯ほど優遇される税制も検討すべきだろう。これは、世帯の所得をいったん家族の人数(N)で割って課税所得とし、さらに1人あたりの税率を10%に減免した上で家族人数を掛けて納税額を決めるというものだ。たとえば共働きで子供2人の4人家族の場合、世帯の所得が1000万円とすれば、課税所得は4分の1の250万円、1人あたりの税額は25万円で、世帯税額は100万円になる。
この税制なら子供が増えれば増えるほど負担が軽くなっていくわけだ。逆に、単身世帯は損をする。世帯所得の100%に課税され、しかも税率は33%だ。所得が1000万円ならば1人あたりの税額=世帯税額は330万円になる。
極端に言えば、独身者の税率を割り増しするという方法もあるかもしれない。20代独身者の所得税率は10%、30代独身者は20%、40代以上の独身者は30%……といった具合に、長く独身でいると損をするような税制だ。あるいは、パラサイト・シングルを減らすため、30歳以上の独身者が親と同居する場合は“同居税”を徴収したりする、という議論があってもよい。
もちろん独身者は誰もが望んで独身でいるわけではなく、斟酌すべき理由もあるだろう。親との同居も本人の病気や親の介護など家庭の事情があるケースも多く、実際問題として税制だけで解決するのは難しい。
それでも、今後の「超・少子化問題」は、そのくらい思い切った対策も提示して社会に大議論を巻き起こす覚悟で取り組まない限り、絶対に反転しないと思う。明治時代の戸籍制度を墨守し、夫婦別姓制度すら全く受け入れない今の自民党政権では、永遠に問題解決ができないことは確かである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2021~22』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2021年7月16・23日号