予測を大きく上回るスピードで、少子化が加速している。国は夫婦別姓や育休制度、待機児童問題などを検討し、あの手この手で婚姻数・出生数を増やそうとしているが、依然として効果は見込めていない。子供を産み育てるために足りないものは、本当に“制度”なのだろうか?
働きながら育児をするために必要不可欠な「育児休業制度」と「保育所」は今どんな状況か、見てみよう。
育休制度は、取得してもクビや給与引き下げとならない「雇用保障」と、育休前の勤務状況と所得に応じた金銭を受け取れる「給付金」が二本柱となる。
あまり知られていないが、日本の育休制度は、世界の先進国と比べて遜色ない。取得期間は原則1年だが、保育園に入れないなどの事情があれば、最大で2年間まで取得できる。子供が1才になるまでの最初の半年間は休業前賃金の67%、それ以降は50%の給付金が受け取れる。
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授の山口慎太郎さんの著書『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)によれば、日本の育休制度の給付金が月給に占める割合は「世界一子育てしやすい国」とされるデンマークより高く、スウェーデンとほぼ同等。期間が12週で給付金がゼロというアメリカと比べてはるかに恵まれており、日本の女性には「出産→育休→職場復帰」というルートが約束されているかに思える。
ところが、現実は異なる。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、2010~2014年に働きながら第1子を産んだ女性の46.9%が出産後に退職しているのだ。東京都の会社員の女性(35才)は頭を抱える。
「世間は育休が取れたら、なんとなく育児が一段落したと思われている感がありますが、それは違う。子育ては続きます。うちは復帰明けで第5希望の、かなり遠方の保育園に滑り込んだものの、熱を出して園からお迎えの要請があったり、インフルエンザにかかって看病したり。私が休むとほかの人に負担がかかりますから、どうしたって同僚の目は厳しい。
どうしても仕事が休めない日に、隣県に住む義母に看病をお願いしたら、“病気の時は、やっぱりママが子供のそばにいた方がいい”と言われてしまいました。休みたくても休めないからお願いしているのに、たとえ親であっても、上の世代にはわかってもらいにくい」