歳を重ねても住み慣れた我が家に住み続けたい――内閣府の「高齢社会白書」(令和元年版)では、60歳以上の51%が「自宅で最期を迎えたい」と回答している。にもかかわらず、“子供を頼りにしたい”と考え、自宅をダウンサイジングして息子や娘の家の近所に引っ越してしまうケースがあるが、慣れない土地に移り住むのは想像以上に労力がかかる。だからこそ、自宅は「自分と妻だけのための資産」と考える選択も有力になる。
「子供に頼らず夫婦でより幸せな老後を送るためには、住まいの備えを早めに始めましょう」
そう指摘するのは、介護評論家の高室成幸氏。高室氏は自宅の「改修」が重要になると解説する。
「受け入れる高齢者施設の不足などもあり、在宅介護のニーズが高まっています。いずれ介護施設に入居するにしても、それまでの期間をどうするか。自宅を施設や病室の視点で改修するのも一つの選択肢です。具体的には自宅のバリアフリー改修です。『つまずき』『すべり』『ふらつき』のリスクを解消すれば、家の中での転倒事故を予防できます」
東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故」によると、家庭内事故の9割以上を転倒と転落が占めている。
「『つまずき』の原因は、不要な物を処分することである程度解消できる。また、簡易的な『段差解消スロープ』や『人感センサーライト』を廊下に設置すれば、転倒防止につながります。『すべり』の防止には、階段や風呂場の浴槽に『滑り止めシート』を貼ることで一定の効果を得られます。これらは、ホームセンターで1000~2000円程度で購入できます」(高室氏)