緊急事態宣言下で飲食店の時短営業、酒類の提供中止などが要請され、ビール業界も苦境に立たされている。居酒屋に行けば「とりあえずビール!」が定番だったが、このコロナ禍では、それも遠い昔の話のように思えてくる。そうした中で、光明となっているのが「糖質ゼロビール」の躍進だ。
キリンが2020年10月に発売した「一番搾り 糖質0(ゼロ)」が上半期販売目標の約1.3倍の250万ケース(大瓶換算)を突破。サントリーの「パーフェクトサントリービール」も、今年4月の発売から約2週間で販売数量が2500万本(350ml本数換算)を記録するなど、コロナ禍の家飲み需要と健康志向を受けて、売上も好調に推移している。
糖質ゼロビールの登場で救われているのはビール業界だけではない。健康を気にするビール党たちにとっても、待望の商品だったようだ。
「健康を気にして糖質オフ生活中だったのですが、その中でも美味しいビールが飲めるなんて夢のようです」
そう喜びを語るのは、メーカーに勤務する40代男性・Aさんだ。居酒屋で気軽に飲みに行けなくなったため家飲み主体へとシフトしたが、正直、ラインナップに限界を感じていたという。
「最近はウイスキーや焼酎が多かったですが、飽きると糖質ゼロ系のチューハイにも手を出していました。もともとビール好きだったので、冬場の鍋料理や夏場は飲みたくなるんですが我慢してきました。でも、これからはリピート確定です」(Aさん)
ビールに手を出さなかったのは「糖質だけ」が理由ではない。
「糖質ゼロでもビールの味わいがちゃんとしてることに衝撃を受けました。これまで発泡酒や第3のビール(新ジャンル)で糖質ゼロの商品はたくさんありましたが、どうしても味の濃さや後味の余韻を物足りなく感じていたんです。その点、糖質ゼロビールは革命的でした。しっかりした苦味もあって普通のビールと遜色ありません」(Aさん)