近隣で行われている工事の音はどうしても気になってしまうもの。夜型の生活をしている人にしてみれば、工事の音で安眠が妨げられるケースもあるだろう。もしも、工事の騒音が原因で、収入が減少するようなことがあれば、慰謝料などを請求することはできるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
夫は個人タクシーの運転手で深夜に働いているため、昼夜逆転の生活をしています。ところが、うちの隣でマンションの建設が始まり、日中、工事の音がうるさくて眠れなくなり、仕事に支障が出ています。コロナでお客が減って大変なのに加え、不眠になり、さらに売り上げが激減。建設業者に慰謝料を請求したいのですが、どうしたらいいのでしょうか。(神奈川県・49才・パート)
【回答】
所有者が自分の土地でマンション建設をするのは自由です。その一方で、隣接する住民にとっては平穏な日常生活はもちろん、睡眠や休息は人間生活にとって不可欠です。周囲の住民の受忍限度を超えて、平穏な生活が脅かされるような騒音になれば、不法行為になる可能性があります。
騒音規制法は、建設工事で杭打機、削岩機、鋲打機などの一定の工事機械やパワーショベル等の重機を使用する作業を「特定建設作業」として規制対象にし、騒音を規制する地域は市長や知事が指定します。あなたのお住まいが規制地域に含まれるかは、地元の役所に聞けばわかります。
規制される騒音の基準は、工場などの騒音については市長や知事が定めますが、特定建設作業による騒音は環境大臣の告示が基準になります。
基準では時間帯は地域で違いますが、夜間の特定建設作業はできず、工事できる時間でも工事現場の敷地の境界線での騒音が85デシベルを超えてはならないとされています。デシベルとは音の大きさを表す単位で、85デシベルは相当にうるさい騒音です。大声で話さないと会話が成立しないほどでしょう。敷地境界で85デシベルの騒音があれば、隣接住宅内で安眠は到底できないと思いますが、これを超えない限り、騒音規制法違反になりません。