たとえば、「家の中でつまずいて足の小指を打った」とLINEすると、「白内障? 老化、早いね」と返ってくる。「原チャで信号無視して捕まった」と送ると、「また捕まったの? ドジ」と来る。
スマホの画面を見てふと気がついた。Aさんが攻撃的なLINEを送ってくるのは午後6時過ぎ。つまりアルコールタイムなのよ。
それが、今年の春から午後5時過ぎになったかと思えば、梅雨に入った頃には、陽の高い午後4時から「今日はちょっと早め」とライム入りのグラスを掲げた写真を送ってくるようになった。「大丈夫?」と聞くと、「あなたみたいにバカな量を飲まないもの」と憎まれ口。会えばニコニコしている普段のAさんと、アルコールが入ってLINEを送ってくるAさんはまるで別人だ。
私だって昼から飲むようになるかもしれない
Aさんだけじゃない。Kさん(65才)の家には、前にはなかった缶チューハイが箱で積み上げられている。ギョッとして見たら、「あ、夫が飲むのよ。私はめったに飲まない」とやけにキッパリ言う。彼女の夫から、「最近、Kちゃんが昼から飲んでいてケンカになる」とコボされていることを彼女は知らないのだ。
これって、もしかしたら世界中で起きていることではないか。家族や友達と一緒に飲んでいたら、ほどほどの“小酒飲み”だった人が、ひとりで酒瓶を開けるのが日常化して、そうなるとアルコールで心身を蝕まれる人も出てくる。
こんなことを言うと、で、お前はどうなんだ?と言われそうだけど、私は若いときから、飲むより打つ方。ギャンブルで身を持ち崩したけど、冷蔵庫にビールが冷えていたことがなく、いただきものの缶ビールは気前よく友達にあげていた。
それが7年前からちょっとしたきっかけで家飲みをするようになったら、あっという間。気がついたときは缶チューハイがなくてはならないものになった。そして、心臓をわしづかみされるような痛みを感じて、夜中に何時間ものたうち回るようになった。
心房細動。それをかかりつけ医は「酒飲み病」と言う。
仕事仲間と飲んだ後、「昨日はずいぶん酔ってましたね」と言われるようになったのもこの頃からだ。恐しいことに、酔ってどんな言動をしたのか覚えていない。これを「ブラックアウト」といって、アルコール依存症の入り口という人もいる。