コンテナ運賃の上昇が止まらない。特に中国~米国間の上昇が顕著である。上海から米国西海岸向けのコンテナ運賃の動向を示す指数として上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI米国西海岸線)があるが、指数は春先には一旦落ち着きを見せていたもののその後は強い上昇トレンドを形成している。4月2日には4056ポイントであったが7月30日には7395ポイントまで上昇している。
運賃急騰の要因として、まず、米国経済の回復が挙げられる。2021年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率で6.5%。1-3月期の6.3%を0.2ポイント上回っている。需要項目をみると個人消費支出が11.8%増と高い伸び率を記録している。新型コロナ新規感染者数の鈍化(ただし、この時点まで)により消費が急回復しており、それがコンテナ需要を牽引している。
一方、供給面でも大きな問題がある。人手不足が深刻で、港湾の作業効率が上がってこない。積み荷の降ろしが停滞、長い待ち行列の解消が進まない。空のコンテナ船回収が間に合わず、それが中国側でのコンテナ船不足の最大の要因となっている。
こうした状況で中国の輸出関連企業は強い危機感を持っている。その多くは零細企業であり、資金力が乏しい。売上鈍化は運転資金のひっ迫に直結しかねない。薄利多売、価格競争力が零細輸出企業の強さであるだけに、輸送運賃の上昇、高止まりが長引けばその競争力が奪われかねない。さらに、長期化すれば、サプライチェーンそのものが変化しかねない。
一方、米国にとっても影響は小さくない。もし、バイデン政権が、製造業の国内回帰を進めるために、港湾での人手不足に無策であるとすれば、それは米国経済にとって大きなリスクとなりそうだ。
コストプッシュ型インフレが金利上昇を招く可能性も
“インフレは早晩ピークを打ち、年後半にかけて物価は安定に向かう”。これは、米国株が上昇を続けるための大前提であるが、それが崩れかねないからだ。
コンテナ船運賃の上昇、港湾での輸送障害などから、供給側に問題が生じ、コストプッシュ型のインフレが生じる。それが極端になった場合、金利上昇を招き、それをくい止めるために金融を引き締めざるを得なくなる。