田代尚機のチャイナ・リサーチ

東京五輪の“便乗商法”でにぎわう中国ネットショップの商魂

 中国全土で多くの人民が、一斉に五輪競技の中継を見ていた。前出「The Paper」などによれば、大会前半で行われた競技(卓球、水着、踏切板など)に関連する製品の売上高は急増している。そしてその売れ行き好調の背後には、業者、ショップの巧みな販売戦略がある。

 オリンピックのモットーは「より速く、より高く、より強く」だが、ビジネスではまず、「より速く」が重要である。それは日本企業にとっても同様だ。

 たとえば、7月26日に行われたスケートボード・ストリート女子では13歳の西矢椛選手が金メダルを獲得した。「試合中、銅メダルを獲得した中山楓奈選手と何を話していたのか」と試合後のインタビューで聞かれ、彼女は「ラスカルの話をしていました」と答えた。このラスカルを巡り、ネット上ではそれが何なのか、大きな話題となった。

 後に、アニメ『あらいぐまラスカル』のテーマ曲の話をしていたことが判明したが、たとえばネットショップが「あらいぐまラスカル」の関連商品をいち早く仕入れて儲けるというやり方もあったかもしれない。アニメ自体が1977年の作品なので、相当の時間が経っている。当時のおもちゃなどの関連商品には希少価値があるため、短期的ではあるがビジネスにつながった可能性はある。

 東京五輪は開催を巡って賛否もあったが、終わってみればアスリートたちの躍動する姿が多くの人たちの心を打ったのは間違いない。そして人の心が動くところには、必ず商機がある。それを看破し、「より速く」動く貪欲さが、ビジネスで成功する要素のひとつと言えるかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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