制度変更の方向性として、贈与時は非課税だが、相続時にまとめて課税される「相続時精算課税制度」に一本化される可能性もある。この場合、工夫すれば生前贈与が節税につながる余地が残されるという。
「土地や株式など、将来、値上がりが期待できる財産を持っている人であれば、そういう財産を選んで、生前贈与する方法があります。たとえば今年、2000万円で贈与した土地の価格が10年後に4000万円になっていたとしても、相続税を計算する際には贈与時の2000万円の価値で計算されて節税になるということです」(山本税理士)
どのようなルール変更になるかがはっきりすれば、それに合わせた対策が見えてくるわけだ。前出・木下氏もこう指摘する。
「現行制度のもとでも、亡くなった時の相続税がどれくらいになりそうか把握せずに闇雲に対策をしている人が多い。“どのくらい生前贈与をすると得か”の線引きは難しく、慌ててたくさん贈与すればいいという話ではない。
ただ、今後、相続税対策で暦年贈与に頼れなくなるのは間違いないので、自身の資産内容は今から精査しておいたほうが新たな対策を講じやすくなるでしょう」
年末に向けて、制度がどのように変更されるのかを注視する必要がある。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号