かつて日本企業は数々のヒット商品を世界に送り出し、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と称された。それから“失われた数十年”を経た今、それらの企業は意外な形で復活を遂げていた。
昨年来のコロナ禍が続くなかで、上場企業の2021年4~6月期決算では、純利益の総額が前年同期の2.8倍に達した。日本企業が活力を取り戻しつつある。
その復活の象徴といえるのがソニーだ。昨年度の決算では、純利益が前年比倍増の1兆1000億円という史上最高益を叩き出したばかりか、今年4~6月期の純利益も前年同期比9.4%アップの2100億円を記録し、勢いは止まることを知らない。
ソニーといえば、かつては、“イッツ・ア・ソニー”を旗印にウォークマンやVAIOなど数々の世界的ヒット商品を生み出してきたが、ゲーム機のプレイステーション・シリーズを例外として近年は記憶に残るような商品は少ない。どうして業績が伸びているのか。電機、IT業界を得意とするコンサルティング会社AMC代表の安田礼一氏が分析する。
「ソニーはもはや電機メーカーではありません。今はソニーグループと社名を変え、傘下にゲーム、音楽、映画、エレクトロニクス、半導体、金融といった事業会社を抱えている。ソニーの事業で大きな利益を上げているのは巣ごもり需要に支えられたゲーム関連事業や音楽配信事業ですし、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』もソニーの系列会社(アニプレックス)が手がけています。
それらに加えて生命保険や損害保険、銀行などの金融事業などの存在も大きい。電機メーカーの中で金融事業を主力にしているのはソニーだけで、金融が事業の柱の一つになっています」