住まい・不動産

「二世帯住宅」「アパート経営」 相続でよくある失敗とリスク回避法

相続税対策を失敗しないためには

相続税対策を失敗しないためには

 相続には様々な“特例”があり、それを活用した相続税対策も多いが、注意が必要だ。たとえば、親と同居する子が自宅を相続する場合、「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が適用され、土地(330平方メートル以内)の相続税評価額が8割減となる。

 その特例を使おうと、父親の土地に二世帯住宅を建て、1階を父親、2階を長男の名義としたが、父親の死後、「同居」とは認められず、特例の適用を受けられなかった──。

 相続専門の税理士法人レディング代表の木下勇人税理士が解説する。

「これはよくある失敗で、二世帯住宅が階ごとの区分所有となっていると、“同じマンションの別室に住んでいる”のと同様に解釈されてしまい、原則として同居とみなされない。

 建物を区分所有登記にするのではなく、親と長男の2分の1ずつの共有名義にすると、特例が適用できる可能性が高まります。ただ、登記変更は土地家屋調査士などに依頼する必要があり、手間もコストもかかるので、それに見合うかは要検討です」

 小規模宅地等の特例は、節税効果が高いので活用したくなるが、かえって損をするリスクもある。

 年老いた母親は、相続税対策でアパートを経営していた。賃貸アパートが建つ「貸付事業用宅地等」は相続の際に小規模宅地等の特例が適用され、200平方メートルまでの敷地の相続税評価額が最大50%削減されるからだ(ただし、特定居住用宅地等には制限あり)。

 ところが、建てて10年後には空き部屋だらけに──。

「とくに地方ではこうした相続税対策の事例が目立ちます。代々受け継いできた土地があって、毎年の固定資産税ばかりがかさむといった場合、業者から勧められるままにアパート経営に手を出してしまうことがある。

 ただ、地方では需要が少ないため、築10年を超えたあたりから経営が厳しくなりがちです。自己所有の土地に借金をしてアパートを建てていれば、たしかに相続財産は圧縮されて相続税は安くなります。小規模宅地等の特例を使うなどして、相続税がゼロになることもあるでしょう。

 ただ、空室だらけのアパートは相続人にとってマイナスの資産でしかない。売却しようにも金額を相当下げなければ買い手はなかなか見つかりません」(木下氏)

“負の遺産”を残すようでは、対策は失敗である。

※週刊ポスト2021年9月10日号

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