関心の高い分野で成功を収めている3人の先輩
かくして好きなものは言い続けたほうが人生を快適に過ごせる、というのは明白だと思うのですが、これは仕事でも同じです。私の場合、「インターネット上の諍いやら論調について詳しい」ということを言い続けた結果、それに関連した仕事が続々ともらえるようになり、今に至っています。
自分の得意分野、やりたいことはバンバン言い続けた方がいいのです。それで思い出すのが、広告会社の会社員時代の同じ部署の先輩3人です。
一人は「環境問題に関心がある」と言い続けた結果、環境関連の仕事がある時は、まず同氏がアサインされるようになりました。「ワークショップに関心がある」と言い続けた人は、広告や広報企画でワークショップを開く際は必ず呼ばれるようになり、ワークショップに関する書籍を出版するに至りました。
現在、九州大学芸術工学研究院デザインストラテジー部門の教授を務める井上滋樹氏は、「ユニバーサルデザイン」の研究をし続け、関連部署を立ち上げた後に九大の教授にまでなりました。
「ゼネラリスト」的生き方もいいのですが、社会に求められやすいのは、とある分野に特化した人材でもあります。そうした意味では、私の先輩3人は、「環境」「ワークショップ」「ユニバーサルデザイン」という関心の高い分野で成功を収めていると思います。
本稿で述べた「嫌いな食べ物を言え」「好きなものを周囲に吹聴しよう」は、ビジネスにも通じることなのです。ですから皆さんもぜひとも自分が好きなもの、得意なもの、嫌いなものは周囲に伝えておきましょう。ある時誰かが「そういえばアイツはこの分野に関心があったな……」と素晴らしい仕事を振ってくれる日が来るかもしれません。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。