ビジネス

「弁護士会」を揺るがす新旧勢力の内部対立 過払い金返還案件が火種に

“大量広告戦略”は、手っ取り早く利益を上げる手段であるだけなのか。その登場は、時代の要請だったともいえる。

 2001年の司法制度改革によって、弁護士界の環境は大きく変わった。法科大学院が設置され、毎年の司法試験合格者は大幅増。2007年に2万3000人だった弁護士数は、2015年に3万6000人、2020年に4万3000人と急増した。弁護士多産時代になり、何が起きたか。若い弁護士たちに仕事が回らなくなり、生活できなくなっていったのだ。

 そうした食えない弁護士たちの“救世主”になったのが、広告を活用して相談の需要を掘り起こした新興勢力だった。酒井氏が続ける。

「弁護士の急増で、新人弁護士が過払い金請求に流れ、スキルが磨かれないままで食べていけないといわれていますが、実はそんなことはありません。実際は売り手市場です。いまも弁護士は不足していて、仕事はいくらでもあります。広告しているB型肝炎給付金の相談や、アスベスト被害者の賠償金の相談以外にも、騒音訴訟や交通事故など、こちらから相談者に近寄っていくことで、需要は生まれ、仕事が発生するのです」

 カネ儲けに熱心な連中だと、弁護士会中枢は反発する。だが酒井氏には、困っている人に寄り添うことにつながるという自負がある。

「弁護士は、いまも依頼者にとっては敷居が高い。でも、実はとても便利な存在です。債権者への厳しい取り立ても、弁護士の受任通知があれば止まる。B型肝炎やアスベストなどの被害者は、国から賠償金をもらえるのに知らない人が多い。どんな契約を結ぶにも弁護士が入るだけで有利になるし、ごまかされることもない。私たちは、弁護士は『サービス業』であると考えて、前に出て需要を創出しています。それが依頼者のためになると信じています」

変わるべきは、弁護士会

『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)への出演で知られ、『日弁連という病』(ケント・ギルバート氏との共著)を著わした北村晴男弁護士は、「単に弁護士会の懲戒処分が間違っているのにとどまらず、弁護士会の悪しき体質が表面化した事件」と言い切る。

「140万円を超えた際の司法書士からの事件承継は当然必要なので、本来、弁護士会は司法書士会と協議し、承継のガイドラインを設定すべきでしょう。それを怠った挙句に、司法書士会が同じ事案で、『紹介料に当たらず適法』と判断したにもかかわらず、弁護士会が司法書士会と協議もせずに平然と真逆の結論を出すのは、『司法書士会に法解釈などできるはずがない』との傲慢な心理によるものです。

 従来から弁護士会は、特定の政治思想を持つ者たちのリードにより、全国の弁護士の総意とはいえない『死刑廃止』や『集団的自衛権の行使反対』などの政治声明を出して国民の多くの信頼を失ってきた。今回の懲戒事件の手続きの流れを見ると、独立性のある綱紀委員会の判断を介さず、弁護士会主導で、傲慢な判断がなされています。これによって冤罪が生み出され、国民の信用をまたも失う結果を引き起こしている。変わるべきは、弁護士会なのです」

 果たして“汚名”はそそがれるのか。日弁連の結論は今年10月以降に出される。

※女性セブン2021年9月16日号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。