「かんたんレシピ」で魅力を伝える
──目新しさがなくても、売れるものでしょうか。
小出:店頭販売に家内を連れて行ったことがありますが、多くのお客様が家内のところに寄ってくるんです。なぜだろうと思って隣で聞いていると、「この商品は簡単に和えたり混ぜたりするだけで、美味しいお料理ができるんですよ」と説明していたんです。
実際に家内が我が家で作っている桃屋商品のレシピをお客様にお伝えしていったのですが、凄い反響でした。今はそれを「かんたんレシピ」と名付けていますが、まさにそれこそが商品価値の“再伝達”なのです。
──昔からある商品でも、使い方で新しい魅力を伝えられる。
小出:美味しい料理を作るには、必ずどこかで手間をかけることが必要ですが、当社の商品で味付けすれば、この手間が楽になる。当社の商品は原料にも製法にも徹底的にこだわっています。いい材料を使い、手間と時間をかけて調理すればコスト高になりますが、お客様が調理する際の手間が簡単になるわけです。
──滅多に新商品が出ない食品会社とも言われます(笑)。
小出:定期的に商品開発会議をやっています。ですが、私が試作品を食べて納得しない企画は絶対に通りません。お客様の期待値を絶対に裏切りたくないという思いが強いからです。妥協を許さない高いレベルを維持してこそ、当社の理念でもある「良品質主義」に合致します。
『きざみしょうが』や『きざみにんにく』も高いご評価をいただいていますが、消費者の9割の方がまだお買い求めいただいていないのであれば、その方々にとって既存品でなく“新商品”だというのが私の考え方です。
そういう意味では、大正時代に発売された『花らっきょう』や、昭和20年代に出した『いかの塩辛』にも伸びしろがあると思っています。たとえば『花らっきょう』をみじん切りにしてマヨネーズと和えれば手軽にタルタルソースが作れます。今では「かんたんレシピ」の数は360を超えました。