世界に誇る「日本食」は、海外の文化を取り入れながら、幅広く進化しているが、海外の料理だと思っていたら、実は日本発祥という料理は案外多い。『銀座 煉瓦亭』のオムライス、『ホテルニューグランド』のナポリタン、『日本橋三越本店』のお子様ランチ、『丸善』日本橋店のハヤシライス、いずれもそうだ。
日本に洋食が最初に根付いたのは明治だが、実はいま、英国で“カツカレー”が大ブームになっている。洋食文化の黎明期に当時の料理人が改良した懐かしのメニューが、西洋人を虜にするのだからおもしろい。
時空や国境を超えて愛される、和洋食の奥深い味とその逸話を紹介しよう。
『銀座 煉瓦亭』オムライス
茶巾寿司をヒントに、挽き肉入り炒めご飯を卵でくるんだ「明治誕生オムライス」(2100円)は1900年に生まれた。既存メニューの「ミースミントボール」(ハンバーグの原型)と同じ挽き肉を具に使い、トマトピューレで味付けをしておいしさを追求。銀座の西洋料理店は高嶺の花だったが、『煉瓦亭』は、のちに「洋食屋」として親しまれるようになる。
『ホテルニューグランド』ナポリタン
戦後、GHQ将校が食べていた「パスタにケチャップをかけただけの食事」に味気なさを感じ、新鮮なトマトを使った野菜料理「スパゲチ・ナポリテーイン」を同ホテル2代目の総料理長がアレンジ。これがナポリタンの原型だ。現在はホテルのコーヒーハウス『ザ・カフェ』が「スパゲッティ ナポリタン」(2178円)として継承している。