「受験、受かるよね」「父の病気が治りますように」
Aさん同様、こうした動画を睡眠用BGMに利用している中学校教師のBさん(20代女性)も、これらのコメント欄に注目している一人だ。
「たしかに、コメント欄は独特な雰囲気ですよね。なかには、〈受験、ぜったいに受かるよね。私は今日こんなに頑張ったんだもん〉と自分を励ましている人や、〈妻が赤ちゃんを授かりますように〉〈父の病気が治りますように〉〈素敵なパートナーが見つかればもっと幸せ。一緒に笑って過ごしたい〉、などと願掛けしている人もいます」(Bさん)
ストレスや不安を抱え、睡眠用BGMというコンテンツにたどりついた人たちのあいだには、おなじ境遇を共有する仲間意識が芽生えるのだろうか。なかには、こうした動画をアップする「主」を神格化するコメントも見受けられるという。
「コメント欄を詳しく見ていくと、〈動画をアップしてくれた人は神様です! 人の幸せのために、収益のない動画をありがとう〉とか、〈辛い人たちのために、ありがとうございます。涙が出る日もあるけど、明日も頑張れそうです〉などと、半ば神格化しているユーザーもいます。
SNSに不幸自慢をすることは憚られるけれども、こうした動画のコメント欄ならば、ひっそりと悩みを共有しあい、本音を書けるのかもしれませんね。たまに良いコメントがあると、私も思わず『グッド』ボタンを押してしまうこともあります(笑い)」(Bさん)
生きづらい現代社会の中で、その苦しみを吐き出す場として、睡眠用BGMのコメント欄が活用されている現実がある。悩みを抱え、癒やしを求める人たちが集まるからこそ、そこに意図されていなかったコミュニティが生まれるのかもしれない。