SNSを開けば「#クリームソーダ」だけで50万件以上の投稿が集まる。純喫茶や銭湯、フィルムカメラ、アナログゲーム、食やライフスタイルなどでは、昭和のレトロなモノがY世代、Z世代と呼ばれる若者を中心にロングヒットを続けており、もはや一過性の現象とはいえない感がある。
昭和育ちには古いと感じるモノが、彼らにとってはなぜ“エモい”と映るのか。昭和に流行したガラス食器の復刻版「アデリアレトロ」を製造する、石塚硝子の広報・川島健太郎さんは、次のように分析する。
「生まれたときからデジタル環境が整った中にいる世代は、デジタル機器に便利さの半面、無機質な冷たさや味気なさを感じており、だからこそ、レトロなデザインや不便なアナログ製品を新鮮に感じるのだそうです。
食器の世界でいえば、いまは100円ショップでもおしゃれなカップは買えますが、それを画一的で物足りないなと感じる人々が、心を揺さぶられる昭和レトロなガラス食器を選んでくださっているのだと思います」
単なるマニア向けの流行ではない証拠に、LINEスタンプでの広がりがある。
「正式な数はわかりませんが、2017年頃からレトロなスタンプの販売数が増え始めました。当初、購買の主流は40代以上でしたが、コロナ禍で若年層にも人気が広がっています。考えられる理由としては、人との接触が制限される状況下で、昭和テイストが醸し出す、温かく平和な雰囲気に癒されるのだと思います。少しくすんだ色合いも、視覚的に安らぎを感じますよね」(LINE広報)
戦後の昭和は、テレビや漫画、ファッション、娯楽などの“ポップカルチャー(大衆文化)”が花開いた時代だが、いまや世界の共通語となった「カワイイ」の萌芽も、この時代にあった。その先駆者が、内藤ルネだ。
「ルネはイラストのみならず、ファッション雑貨や文具、食器のデザインまで、少女の身の回りの“カワイイモノ”を1万点以上生み出しました。それらはことごとくヒットし、いつしか“カワイイの生みの親”と呼ばれるようになったのです」
そう語るのは、ルネ作品の管理を行う「キャストネット」の所裕子さんだ。内藤ルネ(1932~2007年)は、1951年に憧れの画家・中原淳一が起こした「ひまわり社」に入社。日本人離れした少女のイラストで人気を博し、1959年には中原に代わり、『ジュニアそれいゆ』(ひまわり社、1960年に廃刊)の表紙画を担当。