国内でも必要論が囁かれ始めている、新型コロナウイルスの「ワクチンパスポート」。一足先にワクチンパスポート制度「キー・トゥー・ニューヨークシティ(Key to NYC)・パス」を8月中旬に導入したのは、米ニューヨーク市だ。“ワクチン接種がニューヨークの街の扉を開ける鍵”という意味だろう。
「劇場街として知られるブロードウェーで働く私の娘によると、劇場に入る観客やスタッフはすべて接種証明書を見せないといけません」と語るのは、アメリカ在住の内科医、大西睦子さん。
「ニューヨークは米主要都市では初めて、屋内の公共スペースの利用に接種証明書を義務づけました。レストラン、カフェ、バー、ナイトクラブなど屋内飲食店から、ジムやプールなど屋内フィットネス、映画館や博物館、コンサート会場や劇場まで、あらゆる屋内施設が対象で、スタッフにも義務づけられています。違反した施設には罰則が設けられるなど、かなり厳格な制度になっています」
日本も10月以降、そうなっていく可能性は十分考えられる。まずはスポーツの世界、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスは9月2日、本拠地の福岡PayPayドームでの試合観戦を、ワクチンを2回接種した人、または1週間以内のPCR検査で陰性だった人に限定した。
「プロ野球とサッカーJリーグは、ワクチンパスポートの導入に意欲的です。とにかく無観客や観客数制限の現状では、チケットの売り上げが壊滅的。ワクチンパスポートが一定程度に普及すれば、今シーズンにでも導入して、観客数の確保を狙うつもりです。シーズン終盤の優勝を争う注目ゲームに、未接種の人はスタジアムに入れない、ということもありえます」(スポーツ紙記者)
音楽イベントは昨今、イメージがあまりよくない。8月末に愛知県常滑市で開かれた音楽フェスでは、密集して騒ぐ観客や酒類の販売などが問題になり、クラスターも発生。自業自得の出演者やファンはいいとしても、周辺住民は気が気ではないだろう。そこで一肌脱いだのが、大物ミュージシャンだった。
「B’zは9月10日、ライブイベントの来場者に『ワクチン接種証明書』や『PCR陰性証明書』の提示を呼びかけた。提示したファンには『Thanks!』と書かれたオリジナルステッカーをプレゼント。あくまでも“任意”であり、会場内外での感染リスクを減らし、安全な空間作りをするためとのことでしたが、トップランナーのB’zが仕掛けたことで、音楽界でもワクチンパスポートの流れが一気にできるかもしれない」(イベント業界関係者)