ところがバブルの絶頂期、32才のとき、麻雀を覚えた私の野生のカンはさらに研ぎ澄まされた……なんてかっこいい話じゃない。稼ぐお金と支払うお金の間に、遊ぶお金がドーンと幅を利かせ始めたのだから、貯金ゼロなんて生やさしいものじゃない。頭の中で常に牌が蠢いているようになるまで、あっという間よ。ギャンブル依存症の人はみんなそうだけど、負けることは想定外で、毎回勝つ気でいる……というところがそもそもオカシイんだけど、本人は仕事以外の経済活動をしているようなつもりでいるの。気がついたときは消費者金融のカードが何枚も財布の中に入っていて、常に借金の支払いに追われるようになった。
どうしたか。30代のときは親から巻き上げた。「事務所を引っ越すのに15万円足りない」とか「新型のパソコンに買い替えたら仕事がはかどるんだけどな」とか、まぁ、口から出まかせが出る出る。それが通じなくなった40代は、親を騙したり、人目を避けながら借金してまで麻雀をしている自分がつくづくイヤになった。
幾晩か天井をニラんで考えた結果、そうだ、額に汗して働こうというところにたどり着いた。肉体を酷使したらギャンブル依存症から抜けられるかも、とビジネスホテルでベッドメイキングのアルバイトを始めたのよ。
(第3回に続く)
※女性セブン2021年10月14日号