その経緯を事細かに聞いているうちに、お金持ちって救われないな、と思ったの。お金で解決できることはすでにしているから、どうにもならないことだけが手のひらにのっていて、そこから目が離せない。
「そんなの貧乏人だって同じじゃん」と言われたらその通りなんだけど、身辺にまとわりつく面倒ごとは、「お金がないからだ」と思えるだけ救いがある。たとえば子供の成績が悪いのは、いい塾に通わせられないから。顔のシワが増えたのは、高級エステに行けないから。
まるっきりそう思っているわけではないにしても、お金がないからという逃げ場があるじゃない。もしお金持ちになったら……という夢と希望だってある。
貯金がなくていいことはまだある。人から借金を申し込まれる心配がないことと、相続の揉め事とも無縁なことだ。
てか、「余分なお金を持って何をするの?」と私は聞きたい。上等な家具やブランドの服やバッグはメルカリやヤフオク!なんかでビックリするほど手軽な値段で手に入るし、終のすみかが高級である必要がどこにある?
「どんなにたくさん金があっても、好きな饅頭が一度に10個食えるわけじゃねーからな」と言ったのは、知り合いの“元・お金持ち、現在・負債王”で、「いま使う必要なお金があればいいではないの」というのが持論だ。
私も確かにそう思う。そう思えるようになれば、50才で貯金ゼロでも何も恐れることはなくなるんじゃないかな。
※女性セブン2021年10月14日号